電気通信普及財団賞 贈呈式の模様・受賞者の声

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第20回「電気通信普及財団賞」贈呈式の模様

2005年3月22日(火)11:00より
メルパルク東京(郵便貯金会館)にて

  1. 理事長あいさつ
  2. 選考委員による選考経過・講評
  3. 表彰状の贈呈
  4. 受賞者の代表挨拶

○ テレコム社会科学賞 奨励賞
井戸田博樹 様(大阪成蹊大学 現代経営情報学部 助教授)

論文タイトル「情報セキュリティ・マネジメントの理論と実践」

この度は、第20回電気通信普及財団賞・テレコム社会科学賞奨励賞を頂き、光栄に思っております。拙著に対しこのように高く評価を頂いたことは、望外の喜びでございます。

私は10数年間、情報システム関連業務に携わって参りました。実務経験を通じて感じたことはICTの進展にもかかわらず、今なお組織体の多くが情報セキュリティ・マネジメントに十分に取り組んでいないということでした。そこで、情報セキュリティ・マネジメントについて、経営管理の観点から考究を試みました。当初この研究成果は学位論文として発表し、その後、出版の機会を得ました。受賞でもっとも感激したことは、指導教官や周りの諸先生方がまるでご自分のことのように喜んでくださったことであります。このような賞を頂けたのは、厳しくも温かく指導頂いた諸先生方のおかげと心から感謝しております。

今回の受賞をこれからの研究生活の励みとさせて頂くとともに、初心を忘れず今後もテレコミュニケーションの社会科学分野における発展に微力ながら尽力いたします。末筆ながら電気通信普及財団の今後のますますのご発展を祈念申し上げます。


○ テレコム社会科学賞 奨励賞
小川千代子 様(国際資料研究所 代表)
論文タイトル「電子記録のアーカイビング」

これまでは表彰とはおよそ縁のない人生でしたから、このたびの拙著『電子記録のアーカイビング』の受賞は大変晴れがましく、うれしくてなりませんでした。授賞式で「…日常的に当然視されている電子記録について問題提起している点を評価する。」という選定理由を伺い、改めて電子記録が社会のなかで余りにもありふれた存在であることを感じました。

紙が、実は100年ほどダメになってしまうことがわかったのは1980年代。当時100年以上古い本(酸性紙)がぼろぼろになったためでした。同じように電子媒体もいつかダメになる、というのが私の専門であるアーカイブ分野での常識です。記録を長期保存することが前提であるアーカイブ分野では、90年代以来世界規模で電子記録のアーカイビングを焦眉の急の問題としています。でも、現代社会の中では普通、電子記録が消えていくこと自体をさほど重要視されません。ぼろぼろになった100年前の酸性紙のときと同じく、私たちはいずれ消えてしまったり、読み出せなくなった電子記録を(たぶん、苦い)経験として突きつけられるまでは、考えようとしないのではないか。「揮発性」とも言われる電子記録には、アーカイビング=長期保存に大きな問題があることを知っていただきたくて書き連ねた雑誌記事が、出版社の後押しで一冊になりました。その拙著の受賞は、この問題が社会的に認知されはじめた証拠だと思います。皆様、本当に、ありがとうございました。


○ テレコム社会科学賞 奨励賞
朴 英元 様(東京大学大学院 総合文化研究科 博士後期課程)
論文タイトル「組織のコア・コンピタンスと情報技術の導入・利用−日韓企業の比較研究−」

第20回「テレコム社会科学賞 奨励賞」を頂き、誠に光栄に存じます。テレコム社会科学賞の存在は、3年前にテレコム社会科学学生賞を受賞しており、すでに存じておりましたが、自分にとっては何年先のことだと思っていました。しかし、受賞した学位論文の一部が2004年情報通信学会誌に載せられ、それをご覧になった情報通信研究所のある研究員から応募するように勧められました。このような経緯があり、受賞のお知らせには正直驚きました。

当該の受賞論文は、2004年東京大学博士論文として提出した学術論文であるが、学術的な無味乾燥な理論研究に留まらず、企業現場の話を最大限伝えようと努力した著作です。それゆえ、同論文は企業現場の情報システムの担当者のみならず、情報技術と経営との適合性の問題に頭を抱えている経営者や管理者の方々にも大いに役立つと考えております。

TAFのテレコム社会科学賞の存在は、私のように研究者の道を始めたばかりの若手研究者を大いに励ますお力添えになると思います。とりわけ、近年の情報化時代を先んじて取り組む先見的な研究者を支え、情報技術と社会、組織、個人との関係を究明する未来志向的な研究をサポートすると思います。今後もテレコム社会科学賞によって多くの有能な若手研究者が輩出されることをお祈りいたします。


●テレコム社会科学学生賞 入賞
藤井資子 様
論文タイトル「通信事業における次世代ユニバーサルサービスの設計」

この度は第20回テレコム社会科学学生賞を頂き、大変光栄に存じます。会社員であった私が研究者を志すきっかけとなった一冊の本は第11回テレコム社会科学賞を受賞したものでした。その著者が現在の指導教授でもあります。また、学生賞は過去に研究室の尊敬する先輩方が受賞しており、私の研究生活にとっては縁の深い賞でした。今回学生賞を頂戴したことを大変嬉しく思っています。

この研究を始めるきっかけとなったのは、職務経験から生じた素朴な問題意識でした。それは、公共性の高い通信サービスを競争的に普及させる方法を探るというものです。公共性と効率性の両立という課題を「ユニバーサルサービスの設計」というテーマを通じて考察しました。修士論文を、時に厳しく、時に気長にご指導くださいました先生方、ならびに、フィールド調査に多大なるご協力を賜りました地方自治体、通信事業者の皆様に心から感謝申し上げます。

情報通信という変化の早い分野において社会科学の観点から研究に取り組む多くの若手研究者にとってこの賞の存在は大きな励みになるものだと思います。貴財団賞を励みに多くの若手研究者が自らの道を切り開いていくことを祈念致しております。


●テレコム社会科学学生賞 入賞
山本 崇 様
論文タイトル「無線LANによるデジタル・ディバイド解消への考察」

電気通信普及財団という著名な団体に私の論文を認めて頂き、大変うれしく思います。受賞のお知らせを受け取った瞬間にはとても信じられませんでした。私のゼミでは毎年4年生が貴賞に論文を応募しており、去年の荻原さんをはじめとして毎年一人は受賞を与っていますが、今年は当ゼミから二人同時 受賞を頂けたということで、大変な名誉と感じました。

執筆に当たっては、無線LANのような新しい技術の有効な活用法を考えるという過程は私にとってとても興味深いことばかりであり、苦痛を感じる間も なく書き上げることができました。今年からは大学院に進学したので、これからも社会に役に立つ論文 を書いていくことを目標にしていきたいと思っています。

論文を書き上げるにおいて、専修大学経営学部の竹村教授をはじめゼミ生との議論は欠かせませんでした。ゼミでの活発な議論により、穴だらけであった私の論文を完成に漕ぎ着けることができました。 とくに、指導教官である竹村教授の助言・叱咤激励なしには論文を完成させることはできなかったと感 じております。ここに重ねて御礼申し上げます。


●テレコムシステム技術賞 入賞
石田 好輝 様(豊橋技術科学大学 知識情報工学系 教授)
論文タイトル「Immunity-Based Systems: A Design Perspective」

テレコムシステム技術賞は今回で20回目を数えるとの事である。このような伝統ある賞を、20回目という節目で頂けたことは大変な栄誉である。 あらためてご関係の方々に感謝の意を表したい。

生物は情報集約的なシステムであり、人工の情報システムもその設計などで多く を学ぶことができる。しかしその表面的な振る舞いや機構を単に真似るだけでな く、その奥に潜む原理レベルを学ぶことが必要である。そのような原理を免疫系について考え、システム設計の観点からみると、例え ば、故障や異常を0にすることに汲々としているのではなく、それらが起こるこ とを前提にその異常から学び、次に同様の事が起こった時には、より適切に対応 をするという適応システムとしての強かな戦略が見えてくる。故障や異常は必ず 起こりうるとして目を背けず、さらに一歩すすんでむしろそれらから学ぶ機構も 組み込んだシステム設計を、免疫系は教えてくれる。これらは、情報システムだ けでなくセーフティネットなど社会科学も含め多くのシステムで適用できるので はと思える。

他にも、免疫系が「自己・非自己」の境界で働くが故に必然的に起こってくる 「諸刃の剣」としての特性など、学ぶべきことは尽きないが別の機会に譲ること にする。


●テレコムシステム技術賞 入賞
石田 亨 様(京都大学 大学院 情報学研究科 教授)
論文タイトル[1]「Q: A Scenario Description Language for Interactive Agents.」
論文タイトル[2]「Transcendent Communication: Location-Based Guidance for Large-Scale Public Spaces.」

応募論文は、平成12年−16年にかけて行われたJST CRESTデジタルシティプロジェクトの研究成果の一つで、多数のエージェント間のインタラクションプロトコルを記述するための 言語Qに関するものです. Qを用いると、 エージェント群に行動シナリオを与えることができます。例えば, メーカの異なるロボットを数台購入した後に、これらを協調させて複 雑な仕事を実現するシナリオを記述し、 ロボット群を制御することができます。シナリオ記述に表形式(Excel)を取り入れたことで、コンピュータ科学以外の研究者や一般のユーザにも受け入れら れやすくなっています。Qは様々なエージェントシステムと結合されています。

Microsoftエージェント、 仮想都市システムFreeWalkとの連携に加え、 フランスで開発されている環境シミュレータCORMASや、 IBMで開発されているメガスケールのエージェントサーバCaribbean とも結合され, 共同研究が始まっています。また、パリ第六大学、上海交通大学などで使用され、これまでに海外で博士論文2件、修士論文3件を生み出しています。テレコムシ ステム技術賞を頂いたことを励みに、今後, 研究をより深化させていく所存です。


●テレコムシステム技術賞 入賞
山口弘純 様(大阪大学 大学院 情報科学研究科 助手)
論文タイトル「Protocol synthesis and re-synthesis with optimal allocation of resources
based on extended Petri nets」

この度は第20回テレコムシステム技術賞を頂き、大変光栄に存じます。
グリッドコンピューティングやP2Pコンピューティングといった新しいパラダイムの ネットワークシステムに対し、複数のコンピュータ間でどのように相互接続性を正し く実現していくか、というテーマは信頼性の高い分散コンピューティングを実現する 上で非常に重要であると考えております。そのテーマに関する本論文を評価頂けたこと を大変嬉しく思います。

受賞論文で扱っているテーマは、信頼性の高い分散ネットワークシステムを実現 するための設計技法に関するものです。分散システムは、個々の計算機に分散保 存されているデータを計算機間で正しく交換しながら協調動作する必要があります。 本論文では、そのようなシステムの本質的な動作を抽象的なプログラムとして設 計者が記述するだけで、それを元に計算機間で正しく相互通信するプログラムを 自動で決定する方法論を述べています。これにより、計算期間の通信手順を設計 する際の誤りを排除し、かつ設計コストを下げることを狙いとしています。

電気通信が現在までに豊かな社会の実現に果たした役割の重要性と相まって、今 後の社会の発展拡大も電気通信技術なくしてはあり得ません。電気通信分野の研 究の奨励、促進に少なからぬ役割を担うテレコムシステム技術賞が、今後も末永 く継続されますことを期待します。


●テレコムシステム技術学生賞 入賞
司城 徹 様
論文タイトル「物理光学における擬似透過波の除去と開口面法との混合解法」

この度は,第20回テレコムシステム技術学生賞を頂き大変光栄に思っております。本研究を遂行するにあたりご指導、ご配慮頂きました、東京工業大学電気電子工学専攻、安藤真教授、広川二郎助教授ならびに安藤・広川研究室の皆様、その他の関係諸氏に深く感謝いたします。

応募論文は、電磁波の散乱解析の計算法に関するものです。古典的な解析法の誤差要因を基本原理から見直し、精度高く、かつ効率的に計算できる解析法について述べています.アンテナの設計や電波伝搬の解析などに応用できればと思います。

本研究のようにアカデミック要素の強い基礎研究は、現在の産官学連携の時流において、非常に肩身の狭い思いですが、今回の受賞を励みとし、何年後の電気通信の発展に貢献できるよう努力していきたいと思います。


●テレコムシステム技術学生賞 入賞
亀岡弘和 様
論文タイトル「Separation of Harmonic Structures Based on Tied Gaussian Mixture Model and Information Criterion for Concurrent Sounds」

この度は第20回テレコムシステム技術学生賞を頂き大変光栄に思います。本研究を進めるにあたり指導と本質的な議論をして頂いた嵯峨山茂樹教授(東大情報理工)ならびに守谷健弘氏(NTT)に深く感謝したいと思います。また、研究生活を何不自由なく送れるよういつも陰から支えてくれている両親にも感謝致します。

本研究は、重畳する複数の音響信号のパワースペクトルを1チャネル入力より分離するという不良設定問題に対する新しい方法論を提案したものです。スペクトルの調波構造をパラメトリックモデルで表し、その最良モデル構造を推定する問題として定式化しており、混在音源数を推定するための手段も備えた枠組を提供します。この考え方をベースにし、現在はさらに発展した手法を開発しています。

日本の電気通信技術が世界と対等以上に渡り合っていくには、多くの若手研究者が高いモチベーションが持てる環境づくりが大切であると考えられますが、この学生賞は、電気通信系の研究に携わる多くの学生に、よりいっそう奮起を促すものであると信じております。今後ともこの財団賞が学生らにとっての高い目標であり続けることを心より願います。

受賞論文一覧