第30回(2014年度)

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

入賞

「キャリア波と側帯波の分離放射によるオーディオスポット形成」

(論文掲載:電子情報通信学会論文誌A,Vol.J97-A,No.4,2014年4月)

松井  唯  立命館大学大学院 情報理工学研究科 博士課程前期課程2年
共著者:生藤大典、中山雅人、西浦敬信

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審査員コメント

変復調を波の信号処理と見なしたとき、電磁波に比べて音波の研究は日本では少ない。本論文はキャリア波と側帯波を複数のパラメトリックスピーカから別々に放射し、音波の重なった地点にオーディオスポットを生成するという技術を提案評価している。従来技術の直線的指向性を「場もしくは点」に拡張してオーディオスポットの設定を柔軟に行えるようにし、この技術の利用範囲を広げた着想を評価したい。本論文に対する受賞者の貢献は、アルゴリズムの提案、システム実装、実験評価に関わっていることから、多大であり、学生賞にふさわしいと判断される。

「Negative Surveys with Randomized Response Techniques for Privacy-Aware Participatory Sensing」

(論文掲載:IEICE TRANSACTIONS on Communications,Vol.E98-B,No.1,2014年4月)

青木 俊介  東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 博士課程1年
共著者:瀬崎 薫

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審査員コメント

本論文は、参加型センシングにおけるプライバシー保護を実現するために、データ摂動化技術である Negative Surveys と Randomized Response を組み合わせた MNS-RRT アルゴリズムを提案している。提案手法は、計算量を抑えた設計で、多次元かつ相関がありかつ連続値であるデータにも適用できる。これにより、スマートフォン等を活用した参加型センシングを安心して運用することが可能となり、有効性が大きい。受賞者は本論文の大部分について、多大な貢献をしたと判断できる。

「帯域外漏洩電力制約下でのOFDM信号のピーク振幅抑圧に関する検討」

(論文掲載:電子情報通信学会論文誌B,Vol.J97-B,No.6,2014年6月)

日野 貴哉  西日本鉄道株式会社 経営企画本部 IT推進部 係員
共著者:牟田 修、古川 浩

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審査員コメント

本論文では、OFDM伝送において、帯域外漏洩電力と帯域内歪み電力を許容値以下に抑圧することを条件に、ピーク抑圧信号を逆位相で繰り返し加算する手法 により、PAPRを低減する適応ピークキャンセラを提案し、計算機シミュレーションにより、その有効性を定量的に評価している。受賞者は、OFDMの原理 を十分に理解した上で、PAPR抑圧に有効な方法を考案・評価するなど、本論文に対する貢献は多大であると判断される。

佳作

「Unified Differential Spatial Modulation」

(論文掲載:IEEE Wireless Communications Letters,Vol.3,No.4,2014年8月)

石川 直樹  東京農工大学大学院 工学府情報工学専攻 博士前期課程1年
共著者:杉浦慎哉

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審査員コメント

本論文では、MIMO伝送に関して、チャネル推定に基づく信号分離と異なる方式として、ユニタリ性とスパース性の両方の特徴を有するアンテナインデックス行列に基づく差動符号化空間変調を適用する方式を提案している。受賞者は、提案システム全体の設計と性能評価を主体的に実施するなど、本論文に対する貢献は多大であると判断される。また、国際会議の場において、関連論文の賞を受けるなど、対外的にも評価は高い。

「Parameter generation methods with rich context models for high-quality and flexible text-to-speech synthesis」

(論文掲載:IEEE Journal of selected topics in signal processing,Vol.8, No.2,2014年4月)

高道 慎之介  奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程2年
共著者:戸田智基、志賀芳則、サクティ・サクリアニ、ニュービッグ ・グラム、中村 哲

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審査員コメント

本論文はテキスト音声合成法に関する新しい方法を提案するものである。任意のテキストから音声を合成する手法として隠れマルコフモデル(HMM)による音声合成法が多数研究されているが、高い声質制御能力がある反面、音質に劣化を生ずる問題があった。本論文では分散共有フルコンテキストモデルを用いた音声パラメータの生成手法を適用し、HMMの有する柔軟な声質制御能力を保持しつつ音質の改善が可能な音声合成法を提案する。その方法の有効性を示す実験も十分行われており、ますます増加しているテキスト―音声変換サービスに貢献する手法である。受賞対象学生は新しいテキスト音声合成の基本となるアイディアを提案し、その有効性を示す実験システムを構築するなど貢献度は極めて高く、テレコムシステム技術学生賞佳作にふさわしいと評価される。

「VCG-equivalent in Expectation メカニズム」

(論文掲載:コンピュータソフトウェア,Vol.31,No.3,2014年8月)

藤田 悦誌  九州大学大学院 システム情報科学府情報学専攻 修士課程2年
共著者:岩崎 敦、東藤大樹、横尾 真

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審査員コメント

参加者の意志決定過程を示し、かつ個人情報(評価値)の露呈を最小にできる公開型のオークションは、インターネット社会では重要なサービスである。本論文では、高い評価値の参加者に商品を販売するパレート効率性を満たし、平均的に正直戦略が最良となり、かつ不必要な個人情報の露呈を避ける公開型のオークションの設計(VCG-EE)が可能であることを理論的に証明している。さらに、TDDとFDDが共存する第4世代周波数オークションを応用例に選び、その有用性を示している。学生の寄与も高いと思われ、テレコムシステム技術学生賞佳作にふさわしいと判断される。