研究留学者による研究生活の状況

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山本 高至 氏(京都大学
留学先:ストックホルム王立工科大学・スウェーデン

 電気通信普及財団の長期海外研究援助を受け、 スウェーデン・ストックホルムにある王立工科大学(Royal Institute of Technology: KTH)のJens Zander教授のもとで研究活動を行っています。ストックホルムは、知識経済競争力のある地域を示すワールド・ナレッジ・コンペティティブネス・インデックス2008年版(ウェールズ大学・大学院カーディフ校・国際競争力センター発表)において、米国の都市を除けば、トップと評価されている地域です。大学における研究はもちろんのこと、産学連携などのシステムに関しても参考になることは多いと感じています。
メルボルン中心部のBourke Streetにて撮影
王立工科大学(Royal Institute of Technology: KTH)外観

■研究生活の様子

研究室のポスドク研究員や多くの博士課程の学生と同じように、私にも個室が割り当てられています。研究の進め方としては、半年に一回程度研究室のメンバーの前で発表をする機会はありますが、基本は誰の部屋に出向くなどして1対1のディスカッションを通し、自分のアイディアを磨いていく、という形です。個々人のディスカッションを促進することを目的として、発表の場をあえて与えないのではないかとさえ思えます。
発表時にはスライドを使いますが、博士論文などを除いて未公表の原稿を研究室内で回すことはありません。ディスカッションをするときも原稿なしで、いきなり数式などをホワイトボードに全て書き始めるのには驚きました。

■学生気質の相違

研究室には博士課程以上が所属しています。博士課程の学生は15名程度いますが、スウェーデン出身者は1人だけで、ほぼ全員が留学生ですから、留学生という区別自体がありません。修士課程を出た後、5年ほど企業に勤めてから博士課程に入学している学生も多いです。そのため、博士課程後半の学生の中には、研究歴も知識も私と比べて上と思える人も多く、大変刺激的です。博士課程の学生は給与を得ていますし、修士課程の講義を行っている人も多いです。このため、日本の博士課程の学生に近い面もありますが、日本で言えば、助教になったあとで博士号取得を目指す方や、特任助教のような方と捉えた方がいいと感じる場合も多いです。
研究に関しては、アイディアを出した人が論文の第一著者という意識が徹底しており、また有意にその研究に貢献がない場合は、たとえ研究室の教授であっても論文の連名になっていません。むしろ、教員の名前が入っていない論文の方が多いようです。
修士課程は研究室に所属しておらず、講義や実習がメインであり、修士論文のための研究期間は半年以下で、学会発表はほとんどありません。逆に、私が京都大学の修士の学生の学会発表用の原稿を直しているのを見て、なぜ修士課程の学生に学会発表をさせるのだと、疑問を投げかけられたこともあります。

■答えがない問題の議論

ディスカッションの後Jamieの居室にて。左からChandra, Jamie, 私
ミーティング風景
修士課程の教育は、博士課程の学生を含めた研究室のメンバーが担っており、博士課程の学生が採点まで行います。修士論文も含めて、オリジナルのアイディアは学生自身が出すものであり、アイディアを出した人が筆頭著者、という意識が浸透しています。従って、採点はどのように行うか、どこまでがオリジナルのアイディアといえるのか、という議論を行うミーティングも開かれました。面白いと思ったのは、議論はするけれども、最後にまとめの指針などを出すことはなかったことです。確かに何か指針を出したところで、人間相手に全て上手くいくわけはありませんから、このようなやり方もあるのだなと思いました。ただ、もちろん組織がフラットであるから出来る話で、日本のように階層構造になっていると難しいとは思います。