テレコムシステム技術賞

表彰者コメント

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

戸上 真人 氏((株)日立製作所中央研究所 情報システム研究センタ 知能システム研究部 主任研究員)

テレコムシステム技術賞 入賞「Optimized Speech Dereverberation From Probabilistic Perspective for Time Varying Acoustic Transfer Function」

■受賞者コメント

このたびは、「第29回テレコムシステム技術賞」という名誉ある賞を受賞させて頂き、大変光栄でございます。電気通信普及財団の皆様、審査頂いた先生方に深く御礼申し上げます。

今回の受賞対象の論文は、遠隔会議システムにおいて、壁や天井などで音が反射する残響成分を除去し、響きの無い、音声を抽出することを狙った技術になります。音楽等では響きは重要な要素となりますが、遠隔会議システムでは、発話内容を聴き取る上で、残響成分は不要な成分になりますため、このような成分を除去することで、遠隔会議システムをより快適に活用可能とすることを狙っております。今回の技術は、人の顔や体が動くことによる伝達関数の変化に対してロバスト、かつ音声の歪みの小さい残響除去技術を、時不変のフィルタと時変のフィルタを組み合わせることで実現した点になります。また、本技術を組み込んだ遠隔会議システムのプロトタイプを開発し、実稼働状態での有効性を確認いたしました。今後、世界が益々グローバル化していく中で、遠隔地とのコミュニケーションシステムは益々需要になっていくと考えております。今回の受賞を励みに、残響除去技術の実用化、更に統計的信号処理技術の発展に、微力ながら貢献していきたいと考えております。

最後になりましたが、電気通信普及財団の益々のご発展とご繁栄を心よりお祈り申し上げます。

湯川 正裕 氏(新潟大学 工学部 電気電子工学科 准教授)

テレコムシステム技術賞 入賞「Multikernel Adaptive Filtering」

■受賞者コメント

この度は栄えある賞を賜りまして、身に余る光栄でございます。電気通信財団事務局の皆様と審査いただいた先生方に心より御礼申し上げます。非線形関数を推定するための数理モデルは広く研究されていますが、近年、信号処理・機械学習分野で再生核を用いた数理モデルが注目されています。再生核に基づく適応推定アプローチは、大域的最適性・低演算量という大きな利点がある反面、その性能が再生核の設計に強く依存し、時間変動を伴う非線形関数の適応推定において、適切な再生核の事前設計が困難であるという欠点がありました。

受賞論文では、再生核設計への依存問題を解消する現実的な手段として多核適応フィルタを提案しています。複数の再生核を用いることで各々の再生核への依存を小さく抑えながら、演算量の大幅な増加を招くことなく、高精度な非線形関数推定を実現する適応アルゴリズムを与えています。数値実験により、(i)低次元部分空間や不適切な再生核を利用した場合、既存法(単一の再生核を利用する手法)と比べて著しい優位性を示すこと、(ii)パラメータ設定が簡単であること、(iii)非定常データの場合、最適な再生核を用いた既存法を凌駕する性能が得られること、(iv)入力空間が高次元の場合、既存法より少ない計算量で高い推定精度と高速な追従性能が達成されることを実証しています。

今回の受賞を励みに、この研究を発展させ、新しい産業へ繋げていけるよう努力を続けたいと思っています。最後になりますが、貴財団の益々のご発展を祈念いたします。

藤橋 卓也 氏(大阪大学 大学院 情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 博士後期課程1年)

テレコムシステム技術賞 奨励賞「UMSM: A Traffic Reduction Method on Multi-View Video Streaming for Multiple Users」

■受賞者コメント

このたびは「第29回電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞」という栄えある賞をいただき、大変光栄に存じます。電気通信普及財団の皆様、審査委員の先生方ならびに本研究に関して討論いただいた研究者、大学院生の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

今回、賞を頂きました研究では、超臨場感映像技術の基盤技術である複数視点映像(マルチビュービデオ)を複数のユーザに対して効率的に配信す る手法を提案しています。マルチビュービデオとは、ある対象を異なる位置に置かれた複数台のカメラで撮影することで、ユーザ側では対象を自由 な角度から視聴できる技術です。しかしながら、視聴ユーザ数が増加すると、各ユーザに対する冗長な映像伝送が増加し、通信トラヒックが急激に 増加します。本手法では、全カメラ映像のうち、複数のユーザからの要求に共通する映像群をマルチキャスト、それ以外の映像を各ユーザに対して ユニキャストします。さらに、共通映像群を最大化するように各ユーザからの要求送信間隔を制御しています。これらのアイデアにより、各ユーザ に対する映像の冗長伝送を抑制し、既存手法より大幅な通信トラヒックの削減を達成しています。

この度の受賞を今後の研究活動の励みとし、より一層精進していく所存です。最後になりますが、電気通信普及財団の益々のご発展とご繁栄を心よ りお祈り申し上げます。