テレコムシステム技術賞

表彰者コメント

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

山口 弘純 氏(大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授)

テレコムシステム技術賞 入賞「Scalable and Robust Channel Allocation for Densely-Deployed Urban Wireless Stations」

■受賞者コメント

山口 弘純

このたびは「第31回電気通信普及財団賞テレコム システム技術賞」という栄えある賞を賜りまして、大変光栄に存じます。電気通信普及財団の皆様および審査頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。

現在のスマートフォンの爆発的普及に加え、今後はM2M/IoTデバイスの急激な普及が予想され,それらを収容するWi-Fiアクセスポイント数も更に増加すると想定されます。

また今後の自動運転を見据え、車載デバイスによる位置・速度情報を路側の基地局を介してローカルに交換し、近隣車両の相互存在把握を実現する高度交通システムなども現実味を帯びています。

これらに共通する課題は、同一システム内で面的かつ多数配置される基地局間の電波相互干渉です。本論文では、無線基地局が密に設置され、将来にわたり増設される状況を対象に基地局間の干渉関係測定を要せずに高い資源利用効率を達成する資源割当技術を提案しています。同技術では、基地局が設置されたセルから利用可能な資源が一意に決定できる利点があり、資源利用効率も高いのが利点です。大阪市中央区の区画を対象に、路車間通信プロトコル ARIB STD-T109標準準拠の路側機を配置設計する事例に適用し、有用性を示すことができました。

今後は、この技術を様々な電波資源活用事例に応用していければと考えています。

最後になりますが、電気通信普及財団の益々のご発展とご繁栄を心よりお祈り申し上げます。

岩井 大輔 氏(大阪大学 准教授)

テレコムシステム技術賞 入賞「Extended Depth-of-Field Projector by Fast Focal Sweep Projection」

■受賞者コメント

岩井 大輔

この度は、栄えあるテレコムシステム技術賞をいただきましたこと、心より光栄に存じます。電気通信普及財団の皆さま、審査いただいた先生方に改めて深く御礼申し上げます。

近年のプロジェクションマッピングの隆盛に代表されるように、プロジェクション技術は単に映画館や会議室で使用されるだけでなく、わたしたちの身の回りのより生活に関わる領域へと浸透しつつあります。そしてプロジェクション技術は今後、電気通信技術の進歩によって発展してきたサイバー世界と現実世界とをシームレスにつなぐ重要なインタフェース技術になると期待されます。すなわち、プロジェクション技術を用いることで、サイバー空間の情報をわたしたちの生活空間のあらゆる場所に提示することが可能となります。一方で、平面かつ白色のスクリーンに映像を表示することを考慮して設計されているプロジェクタには、このようなユビキタスな情報提示に向かない光学的特性がいくつか存在し、その内の一つが、被写界深度の狭さです。つまり、フォーカスを合わせた合焦面から少しでも離れると簡単に映像がボケてしまう、という問題があります。今回の受賞対象の論文は、このような問題を解決すべく、プロジェクタのレンズ前に、合焦距離を高速に切り替えることのできる特殊なレンズを設置し、合焦距離を高速に前後に振動させる技法を提案し、数学的に被写界深度の拡大を示すとともに、試作システムを用いた実験によって焦点ボケが生じにくくなったことを実証しました。

今回の受賞を励みに、電気通信技術の発展に貢献すべく、微力ではございますが、一層の努力を尽くして参りたいと存じます。最後になりますが、貴財団の益々のご発展をご祈念申し上げます。

正岡 顕一郎 氏(日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部 主任研究員)

テレコムシステム技術賞 入賞「Design of Primaries for a Wide-Gamut Television Colorimetry」

■受賞者コメント

正岡 顕一郎

このたびは「第31回電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞」という栄えある賞を賜りまして、大変光栄に存じます。電気通信普及財団の皆様、審査頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。

今回の受賞論文は、超高精細度テレビジョン(UHDTV)の広色域表色系の設計に関するもので、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)に提案しました。設計思想とパラメータ値の両方に支持が得られ、2012年にITU-R勧告BT.2020に規定されました。カラーテレビ誕生以来、半世紀後の重要で歴史的な取り組みで、設計から標準化、さらに、広色域表色系に対応したカメラ、ディスプレイなどの映像機器の研究・開発にいち早く取り組み、放送品質レベルでのUHDTV広色域表色系の応用を加速させました。米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)で同じ広色域表色系が標準化(SMPTE ST 2036-1)されるなど、世界中から支持が得られ、民生機から放送機器まで、UHDTV広色域表色系に対応した映像機器の開発が進められています。

今回の受賞を励みに、電気通信技術の発展に貢献すべく、一層の努力を尽くして参りたいと存じます。最後になりますが、貴財団の益々のご発展をご祈念申し上げます。

新熊 亮一 氏(京都大学 大学院情報学研究科 准教授)

テレコムシステム技術賞 入賞「A Socialized System for Enabling the Extraction of Potential Values from Natural and Social Sensing」

■受賞者コメント

新熊 亮一

素晴らしい賞をいただくことができ大変光栄です。受賞論文は、人々の社会的関係を数学的表現により定量化する手法と、定量化された社会的関係を制御メトリックとして用いる通信ネットワークアーキテクチャに関するものです。情報は人々の行動に大きな影響を与えます。情報が誤ってあるいは遅れて届くことで人々の行動が誤ったり遅れたりするといったことがあります。情報が人々の社会的関係を育むといった側面もあります。情報を扱う重要な社会基盤として望ましい情報ネットワークの実現に向け、受賞を励みに一層精進して参りたいと存じます。

ご支援くださった皆様に改めて感謝申し上げます。また、電気通信普及財団様のますますの発展を祈念しております。

大竹 剛 氏(日本放送協会 放送技術研究所)

テレコムシステム技術賞 奨励賞「Privacy Preserving System for Integrated Broadcast-broadband Services using Attribute-Based Encryption」

■受賞者コメント

大竹 剛

このたびは「第31回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)奨励賞」という栄えある賞を賜り、大変光栄に存じます。電気通信普及財団の皆様、および審査して頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。

今回の受賞対象の論文は、近年世界中で実用化されている放送通信連携サービスにおいて、視聴者の個人データの保護と利活用を両立するためのプライバシー保護システムに関する内容です。放送と通信が融合し、インターネットを経由して放送番組に関連する様々な情報を視聴者に提供できるようになりましたが、視聴者の好みに応じた情報を提供するためには、サービス事業者による個人データの利活用が欠かせません。一方、視聴者のプライバシー保護の観点から、信頼できる事業者のみに個人データを提供する必要があります。本論文では、属性ベース暗号と呼ばれる新しい暗号技術を用いて個人データを保護しています。視聴者はどのような事業者に自分の個人データを提供するかを指定できるため、安心してサービスを受けることができます。また、サービス事業者はより多くの個人データを収集できるため、魅力的な個人向けサービスを開発できます。今回の受賞を励みに、本研究を発展させ、安心・安全な放送通信連携サービスの実現に貢献していく所存です。

最後になりましたが、電気通信普及財団の益々のご発展とご繁栄を心よりお祈り申し上げます。