テレコム社会科学賞

表彰者コメント

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

高橋 利枝 氏(早稲田大学 文学学術院 教授)

 テレコム社会科学賞 入賞「デジタルウィズダムの時代へ 若者とデジタルメディアのエンゲージメント」

■受賞者コメント

 

 この度は、大変名誉ある電気通信普及財団賞テレコム社会科学賞入賞を受賞することができまして、心より光栄に存じます。拙著『デジタルウィズダムの時代へ』は、私のこれまでの15年間の研究の集大成ですので、本当に嬉しく思っております。

 本書には3つの特徴があります。第1に、社会変動を捉える「コミュニケーションの複雑性モデル」の提示。第2に、若者とデジタルメディアに関する日英米でのマルチサイト・エスノグラフィ。第3に、理論と経験的調査の往還運動から新たな機会とリスクを明らかにし、デジタル革命、グローバル時代を生きるために必要なリテラシーについて考察しました。

 現在、AIやロボット、IoTなど第4次産業革命によって、大きな社会変容が引き起こされています。このような科学技術イノベーションとともに育つ子供たちが、楽しく幸せな人生を送るためには、どのようなリテラシー教育が必要でしょうか?また、新たなリスクに対処するためには、どのようなリスク・マネジメントが必要でしょうか?日本という人口減少国家、超高齢社会において、幸せな社会を創造するために、ますます「デジタルウィズダム」が必要になると思います。

 今回の受賞を励みに、電気通信に関する新たな科学技術イノベーションによってより良い社会が創造できるように、研究に邁進していきたいと思います。電気通信普及財団中山進理事長はじめ、テレコム社会科学部門選考委員および関係者の皆さま、そして支えて下さった全ての皆さまに心より感謝いたします。

 

 

成原 慧 氏(東京大学院情報学環 客員研究員)

テレコム社会科学賞 奨励賞「表現の自由とアーキテクチャ 情報社会における自由と規制の再構成」

■受賞者コメント

成原 慧

 このたびは、名誉ある「第32回テレコム社会科学賞」をいただき、身に余る光栄に存じます。審査してくださった先生方、電気通信普及財団のみなさまに心より御礼申し上げます。この機会に、これまでご指導いただいてきた先生方、先輩方、また、本書の出版にあたり助成いただいたKDDI財団のみなさまにも改めて感謝申し上げたいと思います。

 本書では、情報社会における自由と規制の変容の鍵となる「何らかの主体の行為を制約し、または可能にする物理的・技術的構造」である「アーキテクチャ」に着目し、フィルタリングやブロッキングなどアーキテクチャによる情報流通の規制が問題となった米国の判例等を検討することにより、アーキテクチャによる規制が表現の自由に突きつける問題を解明した上で、かかる問題に対処することができるように表現の自由の保障のあり方を再構成することを試みました。

 審査員の先生のコメントでもご指摘いただいたように、本書には課題も少なからず残されておりますが、今後とも研究に邁進し、精進して参りたいと思います。

 末筆ながら、貴財団の益々のご発展とご繁栄を心より折念申し上げます。

北村 智 氏(東京経済大学 コミュニケーション学部 准教授)

テレコム社会科学賞 奨励賞「ツイッターの心理学 情報環境と利用者行動」(共著)

■受賞者コメント

北村 智

 このたびは、名誉ある「第32回テレコム社会科学賞」をいただき、心より光栄に存じます。私たちの著書『ツイッターの心理学情報環境と利用者行動』は、本文中および謝辞にもありますとおり、電気通信財団研究調査助成を始めとするさまざまな研究助成のご支援によって成立したものです。電気通信財団からは研究調査助成によるご支援をいただくだけでなく、その成果に対してこのような名誉ある賞をいただくこととなり、大変感謝するとともに、今後もこの分野の研究を進展させるべく努力を重ねていかねばならないという気持ちを強くしております。

 本書は特定のテーマに関する利用者行動ではなく、ツイッターの一般的な利用者行動に関する実証的研究をまとめたものです。流行するサービス、技術の状況などに関する変化が激しく、この分野の研究知見はすぐに使えないものになってしまうことがあります。一方で、この電気通信財団賞を受けたような先行研究には、そうした時代の変化をこえて通じる知見、含意を示してくれているものが少なくありません。10年くらいだったあとに振り返ってみて、我々の研究成果をまとめた本書もそうした先行研究の仲間入りができていればと願っています。

 今回の受賞を励みとして、この分野の研究の発展に貢献できるように、そして情報通信技術とコミュニケーションに関する社会的な諸問題の解決に何らかの寄与ができるように、今後も努力していきたいと思います。

中村 彰宏 氏(横浜市立大学 大学院国際マネジメント研究科 教授)

テレコム社会科学賞 奨励賞「通信事業者選択の経済分析 スイッチングコストからのアプローチ」

■受賞者コメント

中村 彰宏

 このたびは、名誉ある「第32回テレコム社会科学賞」をいただき、大変光栄に感じておりますとともに、ご審査いただいいた先生方、そして電気通信普及財団の皆様にあらためて深くお礼申し上げます。

 本書は、消費者が通信事業者を選択・変更する際に生じるスイッチングコストについて実証的に分析し、経済学の観点から論じたものです。最近の10年程度、自身がこのテーマについて研究してきた成果を取りまとめたものです。研究を進めるにあたっては、導いてくださる先生方や、多くの通信事業の現場の方々にご助言いただきました。本書の分析は、謝辞にも書きました通り、情報通信総合研究所で行ったプロジェクトの成果、科学研究費補助金や所属大学等から支援を受けて行ったものが含まれております。また、出版にあたってはKDDI財団の助成を得ています。この場を借りて、これまでご指導いただいた方々や、ご支援いただいた方々へ、改めて感謝申し上げたいと思います。

 今後も、電気通信事業の発展や社会貢献に資するよう研究に取り組んでまいりたいと思います。最後に、電気通信普及財団のますますのご発展を祈念し、受賞の挨拶とさせていただきたいと存じます。