第33回(2017年度)

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

第33回テレコムシステム技術部門の総評はこちら

受賞者からのコメントはこちら

最優秀賞  

「A Hardware-Trojan Classification Method Using Machine Learning at Gate-Level Netlists Based on Trojan Features」

(論文発表:IEICE,IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, 2017年7月)

長谷川 健人   早稲田大学大学院基幹理工学研究科 博士後期課程1年
共著者:柳澤 政生、戸川 望

審査員コメント

本論文では、ハードウェアに組み込まれた悪意のある機能「ハードウェアトロイ」の検出手法を提案している。具体的にはトロイネットの特徴を表す5つの特徴量を求め、機械学習で感染しているか否かを識別する手法を提案して、最新のハードウェアトロイの識別方法と同等以上の結果が得られることを明らかにしている。機械学習適用面での学生の貢献は大きいため、テレコムシステム技術学生賞最優秀賞にふさわしいと判断される。

入賞 

「Multilevel NoSQL Cache Combining In-NIC and In-Kernel Approaches」 

(論文発表:IEEE,IEEE Micro,2017年10月)

徳差 雄太   慶應義塾大学大学院理工学研究科 後期博士課程2年
共著者 松谷 宏紀

審査員コメント

本論文では、データセンターにおけるKey-value Storeの電力効率を改善する、マルチレベルNOSQL階層化手法を提案し、FPGAによるハードとLinuxへのソフトの実装により検証している。推薦状で本人の貢献を明確に高く評価していること、多数の外部発表の実績から学生の貢献は大きいと判断した。実用的で良い研究であり、テレコムシステム技術学生賞にふさわしいと評価される。

「Novel Method to Watermark Anonymized Data for Data Publishing」

(論文発表:IEICE,IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems,2017年8月)
 

中村 優一   慶應義塾大学大学院理工学研究科 後期博士課程2年
共著者 中塚 義道、西 宏章

審査員コメント

匿名加工した個人情報データに関して、無断再配布へ対応するために電子透かしを埋め込む手法を新しく設計した。本論文では、カウンターモードの共通鍵ブロック暗号とターボ符号を用いて電子透かしシステムを構成し、さらに実際に実験的に評価している。本受賞者は論文誌といったアカデミックな活動が顕著であると同時に、標準化での採用といった実学や社会インパクトが大きいことも評価した。今後の活躍を期待したい。

  「Statistical Parametric Speech Synthesis Incorporating Generative Adversarial Networks」
 

(論文発表:IEEE,IEEE/ACM Transactions on Audio, Speech, and Language Processing)
 

齋藤 佑樹   東京大学大学院情報理工学系研究科 博士前期課程2年
共著者 高道 慎之介、猿渡 洋

審査員コメント

音声合成において、合成した人工音声と自然音声の違いが重要な問題になっている。本論文では、ニューラルネットワークの敵対的学習(GAN)の枠組みを導入して、合成音声と自然音声の識別器が区別できないよう合成音声の品質改善を行う手法を提案している。推薦者によるとこれらの提案は学生の貢献が大きく、テレコムシステム技術学生賞にふさわしいと判断される。

「Convex Optimization-Based Signal Detection for Massive Overloaded MIMO Systems」
 

(論文発表:IEEE,IEEE Transactions on Wireless Communications, 2017年11月)
 

早川  諒   京都大学大学院情報学研究科 博士後期課程1年
共著者 林 和則
 

審査員コメント

本論文では、受信アンテナ数が送信ストリーム数よりも少ない過負荷MIMO(Multiple Input Multiple Output)における信号検出を、SOVA(Sum-of-Absolute-Value)最適化問題として定式化した後、さらにW-SOVA(Weighted-SOVA)最適化問題に拡張し、凸最適化を利用して解く方法を提案している。コンピュータシミュレーションの結果、他の信号検出方法と比較して、ビット誤り率と計算時間の両面において優れていることを定量的に明らかにしている。推薦者によれば本論文の要は本受賞者のアイデアによるとのことであり、テレコムシステム技術学生賞にふさわしいと評価される。

佳作 

「Fast Algorithm and VLSI Architecture of Rate Distortion Optimization in H.265/HEVC」
 

(論文発表:IEEE, IEEE Transactions on Multimedia,2017年11月)
 

孫  鶴鳴   日本電気株式会社 中央研究所 研究員
共著者 周 大江、胡 蘭丹、木村 晋二、後藤 敏

審査員コメント

本論文では、HEVCにおけるレート歪み最適化の計算量の低減に関して、高速アルゴリズムとVLSIアーキテクチャを提案している。8Kビデオのリアルタイムエンコーディングを可能としたのは実用的にも意義が大きい。論文の執筆者数は5名と多いが、指導教員からのコメントにより、本論文に対する受賞者の貢献は大きいと判断した。

 「Joint Transmission and Coding Scheme for High-Resolution Video Streams over Multiuser MIMO-OFDM Systems」

(論文発表:IEICE, IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, 2017年11月)

田代 晃司   九州工業大学大学院情報工学府 博士後期課程2年
共著者 Leonardo Lanante、黒崎 正行、尾知 博

審査員コメント

本論文では、MU-MIMO(Multi User - Multiple Input Multiple Output)システムにおいて、個々のユーザ対応のブロック対角化後の固有ビーム伝送をスケーラブル符号化と組み合わせる方法を提案し、特性評価により通信品質の改善を確認している。推薦者によれば、主幹のアイデア、コンピュータシミュレーションによる特性評価などは本受賞者のアイデアによるものであるとのことであり、テレコムシステム技術学生賞にふさわしいと評価される。