第30回(2014年度)
※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。
入賞
「Generalized Theoretical Modeling of Inter-Frame Prediction Error for High Frame-Rate Video Signal Considering Integral Phenomenon」
(論文発表:IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics,Communications & Computer Sciences,2010年8月)
坂東 幸浩 NTTアドバンステクノロジ(株) 担当課長
高村 誠之 日本電信電話(株) メディアインテリジェンス研究所 特別研究員(主幹研究員)
如澤 裕尚 日本電信電話(株) サービスエボリューション研究所 主席研究員
八島 由幸 千葉工業大学 教授
審査員コメント
フレームレートの増加による映像の高品質化が注目されている。本論文はフレームレートの増加に伴う変位量推定誤差の影響、並びにシャッター開口による積分効果の影響を定量化することにより、フレームレートの増加と動き補償フレーム間予測誤差の情報量の関係を示す理論モデルを導出して、提案理論モデルの推定精度が従来モデルに比べて大幅に優れていることを明らかにしている。本論文は高フレームレート映像符号化の指針を与えたものであり、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。
Reproducing Virtual Sound Sources in Front of a Loudspeaker Array Using Inverse Wave Propagator」
(論文発表:IEEE Transactions on Audio, Speech, and Language Processing,2012年8月)
小山 翔一 東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 助教
古家 賢一 大分大学 工学部 知能情報システム工学科 教授
日和﨑 祐介 プロマトリックス ゼネラルマネージャー
羽田 陽一 電気通信大学大学院 情報理工学研究科 総合情報学専攻 教授
審査員コメント
本論文はマイクロホンの集音信号のみを用いて、高い臨場感が得られる音空間を再生する方法を提案している。従来の方法では、受聴者からみてスピーカーアレーの前方に音源を形成する場合は、源信号等に関する情報が既知である必要があった。提案手法ではこれを必要とせずに、かつ線形フィルタリング処理による実時間動作が可能である。数値シミュレーション実験とともに実システム評価により提案手法の有効性を示しており、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。
「Underdetermined Convolutive Blind Source Separation via Frequency Bin-wise Clustering and Permutation Alignment」
(論文発表:IEEE Transactions on Audio, Speech, and Language Processing,2011年3月)
澤田 宏 日本電信電話(株) サービスエボリューション研究所 主幹研究員
荒木 章子 日本電信電話(株) コミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員
牧野 昭二 筑波大学 システム情報系 教授
審査員コメント
本論文は、複数話者が同時発声した混合音から個々の話者の音声を分離するブラインド音源分離技術の関する新しい手法を提案するものである。発話者数より観測マイク数が少ない条件下での音源分離は解が一意に決まらない劣決定問題となり高い分離性能が得られていなかった。これに対し複素ガウス混合モデルを導入した周波数ビン単位のクラスタリングと時間軸に沿った音源アクティビティ情報を利用したパーミュテーションによる新しい手法を提案し、実環境下での使用を想定した残響条件下においても従来手法を大きく上回る音源分離を実現しており、遠隔会議などで役に立つことから、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。
「Integral three-dimensional image capture equipment with closely positioned lens array and image sensor」
(論文発表:Optical Society of America,2013年6月)
洗井 淳 日本放送協会 放送技術研究所 立体映像研究部 上級研究員
山下 誉行 日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部 上級研究員
三浦 雅人 日本放送協会 放送技術研究所 立体映像研究部
日浦 人誌 日本放送協会 放送技術研究所 立体映像研究部
岡市 直人 日本放送協会 放送技術研究所 立体映像研究部
岡野 文男
船津 良平 日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部
審査員コメント
本論文は、メガネの不要な立体テレビ実現のためのインテグラル方式に基づいた撮像装置において、撮像素子と同じサイズのレンズアレーと撮像素子を一体化して、集光レンズを不要とした撮像装置を提案している。この方式により撮像装置の小型化が実現でき、かつ取得した映像をインテグラル方式の立体表示装置に入力した結果、集光レンズによるひずみが無い状態での立体像を確認できており、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。
「Waveform-Dependent Absorbing Metasurfaces」
(論文発表:Physical Review Letters,2013年12月)
若土 弘樹 名古屋工業大学 テニュアトラック助教
サンフーン・キム カリフォルニア大学サンディエゴ校 博士課程
ジェレマイアー・J・ラッシュトン カリフォルニア大学サンディエゴ校 博士課程
ダニエル・F・シエヴェンパイパー カリフォルニア大学サンディエゴ校 教授
審査員コメント
本論文では、人工媒質上にダイオード、キャパシタ、抵抗からなる回路を組み込み、非線形特性を有するメタサーフェスを実現することによって、パルス形状の高強度電波のみを吸収し、連続波の微弱電波を透過する吸収メカニズムを提案し、数値解析と実験により、その有効性を検証している。提案内容に高い新規性が感じられるが、今後は、有力な適用分野を見出し、実用化へ向けた取り組みを期待したい。
奨励賞
「Tele echo tube: beyond cultural and imaginable boundaries」
(国際会議:ACM Multimedia 2013,2013年10月)
小林 博樹 東京大学 空間情報科学研究センター 助教
廣瀬 通孝 東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授
藤原 章雄 東京大学大学院 農学生命科学研究科 助教
中村 和彦 東京大学 空間情報科学研究センター 特任研究員
瀬崎 薫 東京大学 空間情報科学研究センター 教授
斎藤 馨 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授
審査員コメント
自然環境と人間とのインタラクションHCBI(Human Computer Biosphere Interaction)を提唱し、やまびこシステムを構築し、長期の実験によりその実証を試みた野心的論文である。電気通信の運ぶ情報にリアルタイムの環境音を提案し、その知覚世界や人間心理への影響まで踏み込んだ点が面白い。電気通信的には高温多湿の西表島等に設置した無人の商用音響システムをオーバーヒートとメモリリークに悩まされながら24時間通年動作させるため数年に渡って改良したシステム技術にあり、テレコムシステム技術賞奨励賞にふさわしい論文と評価される。
「Unsupervised Clustering-based SPITters Detection Scheme」
(論文掲載:Journal of Information Processing,Vol.23,No.1,2015年1月)
豊田健太郎 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 後期博士課程2年 助教 (有期・研究奨励)
笹瀬 巌 慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 教授
審査員コメント
IP電話の普及に伴い広告や詐欺を目的とした迷惑電話の増加が問題となっている。電話が着信したとき受信者は応答するまで通話内容を把握できないためリアルタイムに迷惑電話かどうか判別することは困難である。本論文はプライバシーの点で問題のない迷惑電話判別法として通話の特徴量をもとに2つのクラスに分類することで通話内容を知ることなく判別できる手法を提案し、その有効性を定量的に示しており、従来判別が困難であった詐欺を目的とする低発信頻度の迷惑電話発信者の判別にも有効であることを明らかにしており、安心・安全な通信に貢献する論文であり、テレコムシステム技術賞奨励賞にふさわしい論文と評価される。