第31回(2015年度)

第31回テレコムシステム技術部門の総評はこちら

受賞者からのコメントはこちら

入賞

「Scalable and Robust Channel Allocation for Densely-Deployed Urban Wireless Stations」

(発表論文:Elsevier,Performance Evaluation Journal,2015年3月)

山口 弘純  大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授
廣森 聡仁  大阪大学 未来戦略機構 講師
東野 輝夫  大阪大学 大学院情報科学研究科 教授
梅原 茂樹  住友電気工業株式会社
浦山 博史  住友電気工業株式会社 主席
山田 雅也  住友電気工業株式会社 部長補佐
前野  誉  株式会社スペースタイムエンジニアリング ソフトウェアエンジニア
金田  茂  米国法人スペースタイムエンジニアリング Director of Engineering
高井 峰生  UCLA Principal Development Engineer
大阪大学 大学院情報科学研究科 招へい准教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

本論文は、WiFi基地局やITS路側機が密に配置されたセル構成において、電波干渉を測定せずに、高い資源利用効率を達成するVCC(Vector-based Cell Cover)アルゴリズムに基づく資源割当て技術を提案している。特徴として、基地局の増設、新規のトラヒック需要、通信エリアの変化などに対する柔軟性が挙げられる。大阪地区において路車間通信プロトコルのARIB標準に準拠した路側機を配置し、実証によって性能を確認した点も高く評価できる。

「Extended Depth-of-Field Projector by Fast Focal Sweep Projection」

(発表論文:IEEE,IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics,2015年4月)

岩井 大輔  大阪大学 准教授
三原 翔一郎 KDDI株式会社 主任
佐藤 宏介  大阪大学 教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

プロジェクタを用いて非平面に映像を投影する場合、単一プロジェクタではピントを合わせるのが困難であった。本論文では、プロジェクタの合焦位置を高速に周期移動させることで複数点にピントを合わせ、かつ観察者の知覚するボケ具合がプロジェクタからの距離によらず一定になることを示し、この影響を高域強調フィルタで除去することによりボケの無い映像を投影できることを可能としており、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。

「Design of Primaries for a Wide-Gamut Television Colorimetry」

(発表論文:IEEE,IEEE Transactions on Broadcasting,2010年9月)

正岡 顕一郎 日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部 主任研究員
西田 幸博  日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部 上級研究員
菅原 正幸  日本電気株式会社 放送・メディア事業部 主席技師長
中須 英輔  一般財団法人NHKエンジニアリングシステム 先端開発研究部長

受賞作品を閲覧

審査員コメント

現在の高精細テレビで用いている三原色では、実在する彩度の高い色を表現することはできなかった。本論文はレーザー光源を想定し、新しいRGB三原色系を提案して、この表色系が実在する殆ど全ての色を表現できることを示している。この提案は超高精細テレビジョンの表色系としてITU-R勧告BT.2020のベースになっており、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。

「A Socialized System for Enabling the Extraction of Potential Values from Natural and Social Sensing」

(発表論文:Springer,Springer Series “Modeling and Optimization in
Science and Technology”, 2014年11月)

新熊 亮一  京都大学 大学院情報学研究科 准教授
澤田 泰治  株式会社Folio
大森 裕介  株式会社神戸デジタル・ラボ 先端技術開発事業部
山口 和泰  株式会社神戸デジタル・ラボ 取締役 先端技術開発事業部 事業部長
笠井 裕之  電気通信大学 大学院情報システム学研究科 准教授
高橋 達郎  京都大学名誉教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

ソーシャルデータのセンシングにおいて、センシングしたデータ群の構造的特徴をネットワークグラフで情報圧縮し、元データがなくても再現できる技術の提案である。単なる技術提案の実証に留まらず、産業応用を目指したフォーラムを作り、実用化に向けた施策を進めている。この意味で、理論と産業応用のバランスの取れた優れた論文であり、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。

「多言語音声翻訳システム“VoiceTra”の構築と実運用による大規模実証実験」

(発表論文:電子情報通信学会,電子情報通信学会誌 和文論文誌D,2013年10月)

松田 繁樹  株式会社 ATR-Trek
林  輝昭  国立研究開発法人情報通信研究機構 先進的音声翻訳研究開発推進センター
葦苅  豊  国立研究開発法人情報通信研究機構 先進的音声翻訳研究開発推進センター
志賀 芳則  国立研究開発法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所
柏岡 秀紀  国立研究開発法人情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 
安田 圭志  株式会社KDDI研究所 
大熊 英男  株式会社フィート
内山 将夫  国立研究開発法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所
隅田 英一郎 国立研究開発法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所
副研究所長
河井  恒  国立研究開発法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所
中村  哲  奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

“VoiceTra”は世界初のスマートフォン向けアプリケーション開発であり、音声翻訳システムとして期待されている。本論文はシステム開発論文として“VoiceTra”の構成を述べ、大規模な実証実験結果について利用形態の分析、音声認識性能、音声翻訳性能の評価結果を中心に論じたものであり、今後の音声翻訳システム開発にとって有効性が高いことから、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。

奨励賞

「Privacy Preserving System for Integrated Broadcast-broadband Services using Attribute-Based Encryption」

(発表論文:IEEE Consumer Electronics Society, IEEE Transactions on
Consumer Electronics, 2015年8月)

大竹  剛  日本放送協会 放送技術研究所
小川 一人  日本放送協会 放送技術研究所 上級研究員
Reihaneh Safavi-Naini カルガリー大学 教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

セキュリティは、ビジネス的には利益よりもコストと見なされがちである。本論文はこの研究グループの既開発のABEの技術的欠点を認識しつつシステム化し、事業者評価団体等のステークホルダやビジネスの組み立て方までが分かるように記載されたユニークな論文である。プライバシーを保護してテレビ視聴履歴を提供するサービスとして実用化まで持っていって欲しい技術であり、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。

「Hierarchical Convex Optimization With Primal-Dual Splitting」

(発表論文:IEEE,IEEE Transactions on Signal Processing,2015年1月)

小野 峻佑  東京工業大学 像情報工学研究所 助教
山田  功  東京工業大学 大学院理工学研究科 通信情報工学専攻 教授

受賞作品を閲覧

審査員コメント

この論文は、凸最適化問題をPDS解法と最急降下法で解く階層型凸最適化アルゴリズムを提案している。理論的に精緻な論文であり、信号復元問題で有効性を立証しているが、応用分野に関しては関係論文へのインデックスだけでなく、もう少し突っ込んだ議論があればさらに良かったと考える。圧縮センシング等、観測値系列から元信号を再生する技術は、近年様々な通信系アプリケーションでの適用が検討されている。当該分野の理論基盤を提供しているという観点で、テレコムシステム技術賞にふさわしい論文と評価される。