テレコム社会科学賞

表彰者コメント

※受賞者の所属は当論文賞受賞時のものです。

宮下 紘 氏(中央大学 総合政策学部 准教授)

テレコム社会科学賞 入賞「プライバシー権の復権ー自由と尊厳の衝突」

■受賞者コメント

宮下 紘

この度は、名誉と伝統ある電気通信普及財団賞テレコム社会科学賞を受賞することになり、心より光栄に存じます。

私の著書『プライバシー権の復権―自由と復権の衝突』は、著書冒頭の謝辞にも記載させていただいておりますとおり、多くの先生方のご指導とご支援があって公刊することができたものであり、今回の受賞はこれまでお世話になった先生方への小さな恩返しになったのではないかと考えております。

電気通信分野の研究は単に文献や資料の研究で終わるものではなく、同時に実務においていかに応用できるかという視点が必要となります。また、日本国内の進展の研究のみならず、国際的な動向に注視していく必要があるとともに、日本の動向を海外に発信することも重要となります。さらに、自らの専門分野を深めるのみならず、隣接する分野の研究にも謙虚に学び吸収する心構えが必要となります。電気通信分野においては、急速な技術の発展に伴う新たな課題への柔軟な思考と広い視野を持ち続けること、そして同時に普遍的な理論と深い洞察力が求められることを感じております。

今回の受賞を励みに、電気通信に係る事業の普及に貢献できるよう、私自身研究を進化させていくようより一層精進してまいる所存でおります。電気通信普及財団の益々のご発展を祈念し、受賞の挨拶とさせていただきます。

末木 新 氏(和光大学 現代人間学部 講師)

テレコム社会科学賞 入賞「インターネットは自殺を防げるか ーウェブコミュニティの臨床心理学とその実践」

■受賞者コメント

末木 新

このたびは、名誉あるテレコム社会科学賞をいただきましたこと、心より光栄に存じます。電気通信普及財団の皆様、審査いただいた先生方にあらためて深く御礼申し上げます。また、謝辞にも記しましたが、本書を構成する各研究に協力して下さった多くの方に感謝します。死にたい気持ちを抱えながらも質問紙調査に協力していただいた方、それのみならず長文での度重なるメールのやり取りに応えていただいた方、各サイトの管理人の方、皆様の声が本書の中で多様な形で生きていると自負しております。

本書は、いわゆる自殺サイトの影響に関する国内初の実証的研究をまとめたものであり、2000年代後期の自殺サイト利用者の声をインタビューや質問紙調査を用いて拾いながら、自殺予防に向けたより良いインターネット・コミュニティ作りの方法を提案したものです。しかし、インターネット関連技術は日々進歩・変化しています。受賞直後にこのようなことを書くことは大変申し訳ないことですが、筆者は、昨今の電気通信技術環境の変化に合わせ、インターネットを活用したコミュニティによる自殺予防という方向から、情報疫学の知見を活用した自殺予防活動の実践へと自身の研究・実践の主軸を既に移しています。

自殺という現象そのものはおそらく太古の昔から存在した(時に悲劇的な)ものであり、その原因はおそらく普遍的なものです。しかし、それをどのように防ぐべきかという具体的な方法は、時代の要請に応じて変化します。このたびの受賞を励みとし、本書の内容をさらに発展させ、今後も、現代に生きる我々が抱えた問題を解決することに少しでも貢献していきたいと考えています。

末筆ながら、貴財団の益々のご発展とご繁栄を心より祈念申し上げます。

脇浜 紀子 氏(読売テレビ放送株式会社 編成局コンテンツビジネスセンター コンテンツ事業部 副部長)

テレコム社会科学賞 奨励賞「『ローカルテレビの再構築』地域情報発信力強化の視点から」

■受賞者コメント

脇浜 紀子

テレコム社会科学賞・奨励賞をいただき、身に余る光栄と感じております。審査してくださった先生方、そして電気通信普及財団の皆様に心からお礼申し上げます。

テレビ局現場勤務のかたわらの研究、執筆活動は決して楽なものではなく、何度となく投げ出しそうになりましたが、幸いなことに、導いてくださる先生方や、激励してくれる研究仲間に恵まれ、本書をまとめることができました。また、出版にあたってはKDDI財団の助成を得ています。この場を借りて支えてくださった方々に改めて感謝申し上げたいと思います。

本書では、「地域情報を伝える映像メディア」を「ローカルテレビ」と定義し、新旧のメディアを包括的に捉えた再構築の道筋を模索しています。特に、筆者自身が身を置く地上波民放テレビについては、自戒もこめて厳しい目を向け、「総合地域情報プロバイダー」となる覚悟をすべきだと訴えました。折しも本書出版直後から、在京局の「見逃し配信」サービスが動き出し、在京局からコンテンツの供給を受ける地方局のこれまでのビジネスモデルは崩れつつあります。地域の映像情報の担い手は、もっと地域のコンテンツを掘り起こし、様々なメディアとの連携に目を向け、自律した経営を行うことに注力していくべきでしょう。

今後も、現場の経験を生かしつつ、地域情報発信力強化に貢献できるよう、理論と実践の両面から研究活動に邁進していきたいと思います。